MP3
MP3(エムピースリー、MPEG Audio Layer-3)とはデジタル音声のための圧縮音声ファイルフォーマットのひとつである。
概要
本フォーマットでは1411.2kbpsで収録されている音楽CD規格のPCMに対し通常の聴取に耐える範囲で音楽なら約128kbps、会話であれば約32kbpsまで圧縮することができる。
狭義のMP3はビデオ圧縮規格であるMPEG-1のオーディオ規格として開発された。非可逆圧縮であり、それ以前の規格であるMP1およびMP2を改良したものにあたる。当初は「MPEG-1 Audio Layer-3」の略称だったが、のちに互換性を持つ「MPEG-2 AudioBC(MPEG-2 Audio Layer-3)」が加わったので合わせて「MPEG-1/2 Audio Layer-3」とすることもある。更に、非公式規格の「MPEG-2.5 Audio Layer-3」を含む場合もある。なお、MPEG-1 Audio Layer-3の仕様はISO 11172-3で規格化されている。規格書は有料であり、それゆえインターネット上では詳細な仕様は公開されていない。
MP1(MPEG-1 Audio Layer-1)、MP2(MPEG-1 Audio Layer-2)は先行規格だがMP3との互換性はない。
MP3の特徴
MP3は音声データを極端な音質の劣化を伴わずに圧縮できるため、CDなどの音源媒体からパーソナルコンピュータ(以下PC)のハードディスクドライブ(以下HDD)に取り込む過程で広く普及した。ファイルの拡張子は「.mp3」。
MP3は周波数による音の聞こえ易さの違い(最小可聴限界)や大きな音が鳴った際にその直前直後や近い周波数の小さな音が聞こえにくくなる現象(時間/周波数マスキング)等の人間の聴覚心理を利用した圧縮を行うため、エンコーダの実装(聴覚心理モデルの調整)次第で圧縮品質は大きく変化する。普及初期にはエンコーダの性能が低く特に聴覚心理モデルの調整が不十分だったため、一般的に用いられている128kbpsという圧縮率では無圧縮と比較して軽い音になるという印象が強くそれほど評価は高くなかった。その後、VBRを採用したエンコーダの登場や聴覚心理モデルの改良が進むにつれ、MP3の評価も上昇していった。
これに追従する形で携帯型音楽プレーヤーからMP3に対応するものが出現した。これらはMP3プレーヤーと呼ばれている。大容量のHDDを内蔵したプレーヤーならば1万曲以上の楽曲を収録可能としている、またCD-RなどにMP3ファイルをWindows Media player等のライティングソフトで書き込んだいわゆる「MP3 CD」は対応機種のCDプレーヤーやDVDプレーヤー等で再生可能で数百曲を収録可能としている。“MP3”という語は「データ圧縮の規格やそれに基づいて作成されたファイルのフォーマット」を指すが店頭広告で“MP3が安い”などの表現が使われるために、MP3が携帯音楽プレーヤーそのものであると誤認されることもある。
ボイスレコーダーでも、三洋など以前からMP3形式での録音可能な機種が発売されていたメーカー以外にも今まで独自規格を採用していたパナソニックやソニー製のボイスレコーダーでも汎用性等の観点からMP3形式での録音可能な機種が出始めている。
圧縮したデータはサイズの減少から取り回しが容易となるため通信回線上で転送することも容易となり、インターネットラジオなどで広く用いられる一方、著作権者が再配布を認めていない楽曲の不正配布に用いられることもある。これに対し「MP3にデジタル著作権管理機能が付いていないためだ」という主張などがある。最近の音楽携帯にはこのような事態を防ぐべく、いわゆる著作権保護に対応するためのmp3としてセキュアmp3を採用している企業もある。
MP3が広く普及した要因として、無料のエンコーダ・デコーダソフトウェアが入手可能な点が挙げられる。1998年以降にはドイツのFraunhofer-Gesellschaft社とフランスのThomson社がライセンスの保有を主張しているが、オープンソースライセンスで提供されているLAMEなど無料のエンコーダやWindows Media Playerなどの無料の再生ソフトウェアが入手できたため普及を妨げることはなかった。
2008年現在、MP3より圧縮率に優れた後発の標準規格「AAC」が「iTunes」・「iPod」・「着うた」などで用いられているが普及率ではまだMP3を置き換えるには至っていない。また同様にMP3の代替を目的とした後発規格としてマイクロソフトが開発した「WMA」や特許の制約を受けない完全にフリーなコーデックとして開発された「Vorbis」、可逆圧縮コーデックとして開発された「FLAC」、ソニーが開発した「ATRAC」などがあるがいずれもMP3のシェアには遠く及ばないのが現状である。なお、WMAやATRACについてはデジタル著作権管理の機能が備わっているためにネット上での音楽配信サービスを行う事業者が採用する傾向がある。また、FLACは可逆圧縮という利点から採用される機会が広がりつつある。